野球入門

TAD-O-TAD2008-02-03

「松蘿玉液」(正岡子規岩波文庫
いわゆる正岡子規の四大随筆の一番目。「仰臥漫録」のころはすでに起き上がることも出来なかった子規だが、この随筆は「病やや間あり、杖にすがりて手のひらほどの小庭を徘徊す。」という文から始まる。舌鋒も鋭い。伊藤博文をボロカスに言ってる所なんかは思わず笑ってしまうし、井原西鶴松尾芭蕉近松門左衛門評は「そんなもんかな」という気にさせる。でも私にとって面白かったのは、「ベースボールの紹介」、「五年前の京都旅行の話」、「果物の感想、というか評というか」の3つである。特に「ベースボールの紹介」の部分(p.33〜42)は野球好きなら是非読んで欲しいと思う。私の惹かれたところを2箇所引用する。


「ベースボールの球 ベースボールにはただ一個の球(ボール)あるのみ。しかして球は常に防者手にあり。この球こそこの遊戯の中心となる者にして球の行く処即ち遊戯の中心なり。球は常に動く故に遊戯の中心も常に動く。されば防者九人の目は瞬くも球を離るるを許さず。打者走者も球を見ざるべからず。傍観者もまた球に注目せざれば終にその要領を得ざるべし。」


「ベースボールの特色 競漕競馬競走の如きはその方法甚だ簡単にして勝敗は遅速の二に過ぎず。故に傍観者には興少し。球戯はその方法複雑にして変化多きを以て傍観者にも面白く感ぜざる。かつ所作の活発にして生気あるはこの遊戯の特色なり、観者をして覚えず喝采せしむる事多し。」


あと短遮(ショルトストップ)の位置が現在と違うのが興味深い。