すごい気力

TAD-O-TAD2008-02-24

「聖(さとし)の青春」(大崎善生講談社文庫)
「聖」とは、平成10年8月8日29歳で亡くなったプロ将棋棋士、故村山聖八段(贈九段)のことである。
子供の頃からネフローゼを患い、大人になってからは進行性膀胱ガン→腎臓と膀胱を摘出→ガンの再発といったふうに、一生病気との闘い。そんな中でプロのトップリーグ、A級八段にまで上り詰めるのだから、ちょっとでも将棋を知っている人なら奇跡に近いと思うだろう。私もそうだ。
彼は己の命が短いことを知っていた。それゆえの将棋への情熱、それゆえの奇行。それらのことがこの本には余すところなく書かれている。また師匠の森信雄との、単なる師弟関係以上と言えるつながりも見逃せない。森が幾度となく呟く「冴えんなあ」という言葉が、このノンフィクションをキュッ、キュッ、と引き締めている。
大人が読んでもあまり面白くないかもしれないが、息子達が中高生になったら是非読ませてやりたい一冊である。


余談だが、村山(奨励会入会前)と小池重明真剣師、このブログでも何度か紹介した)が平手で指して、村山が勝ったというエピソードは初めて知った。