ベンチがアホやから…

TAD-O-TAD2008-11-12

八甲田山死の彷徨」(新田次郎新潮文庫
トップに立つ者がアホやとどういうことになるのか。
生死のかかった場面で精神論を掲げることがいかに危険であるか。
絶対服従ということがいかに理不尽なことであるか。
他にもあるけど、とりあえずこれぐらい。

裏カバーには「神田大尉が率いる青森5聯隊は雪中で協議しているとき大隊長が突然”前進”の命令を下し、指揮系統の混乱から、ついに199名の死者を出す。」と書かれている。この「前進」命令を出したのは山田少佐というアホなのだが、この命令を下す前に彼はある下士官から、「ただいま永野医官殿は進軍は不可能と言われましたが、不可能を可能とするのが日本の軍隊ではないでしょうか、われわれ下士官は予定通り田代へ向って進軍することを望んでおります」と発言し、数名の下士官が同調する。それで山田少佐は断を下す。

失敗しても構わない場面なら「精神論」でやってみてもいいかもしれない。ダメでも「ほらね、やっぱり精神論だけじゃダメなんだよ」と諭すことも出来る。しかし失敗が許されない場合には持ち出すべきではないと思うな。この場合結局隊はほぼ全滅した。私は山田少佐より、この下士官群のほうが罪が重いと思う。

あとは発狂者が出る直前の記述。詳しくは書かないが、神田大尉がすぐ前に掘った雪濠を捨てて帰途につく命を下した時、「大隊長の命令が出たのだ」と言ったのが印象的。たとえ死ぬ確率が高いといえども上官の命令には絶対服従。おお、もう…

ま、いろいろ組織について考えさせられた本でした。

先日、寒い水上でボートの審判員執務を行っておりました。とても寒かったのですが、(これで寒いといったら明治の兵隊さんに笑われる)と思って、「寒い」とは口にしませんでした。