寺撮りしたい

TAD-O-TAD2009-04-14

「陰翳礼讃」(谷崎潤一郎、中公文庫)
カメラを趣味の一つにして、「光と影」について考えることが多くなった。そんなわけで学生時代に読んだこの本を引っ張り出してくる。この文章を読んで真っ先に頭に浮かぶのは、父の実家である山口県の顕孝院というお寺だ。特に「隠寮」と呼ばれる奥まった部屋。そしてまだ水洗化されていなかった厠。本堂はもちろん表の世界だが、須弥壇の裏にはどっぷり陰が隠れている。この薄暗い世界をカメラに収めたいという欲望が私の中を駆け巡る。もちろん親類の皆さんに会いたい、とか、息子達を秋芳洞に連れて行ってやりたい、とかもありますが。


今回は「陰翳礼讃」以外に文庫に納められているエッセイも読んだ。
・懶楕の情
・恋愛及び色情
・客ぎらい
・旅のいろいろ
・厠のいろいろ

私がダントツに面白いと思うのは、やっぱり、と思われるかもしれないが、「厠のいろいろ」であった。一文を挙げると、「水洗式の場合は、自分で自分の落としたものを厭でもハッキリ見ることになる。殊に西洋式の腰掛でなく、跨ぐようにした日本式のでは、水を流すまではすぐ臀の下にとぐろを巻いているのである。…」
こういう尾篭な話が続くわけだが、不思議と不快感はない。自分で改善案なんかを出しているところが面白い。谷崎が今のウォシュレットを見たらどんな感想を持つだろうか。